どこへ続いてゆくのだろう。
繋がっているかもわからない。
私はただ祈りながら
朝がくるのを待っている。
「灯火」
2017
作品のコンセプト
一本の糸を編み続ける、
インスタレーション作品を制作しました。
3階から1階まで編んだ糸の
総距離は800メートルに及びました。
作品を振り返って
糸を編むということは、時間を体感し、
時間を形にしてゆくような作業でした。
この作品は、当時大学2年生だった私が、
11月から12月にかけての一ヶ月間、
卒業制作前のプレ卒制、二分の一卒制
という位置付けで制作した作品です。
毎日寒い真冬の学校の廊下で一人、
糸を編み続けた一ヶ月。
当時の私には、
一本の糸を編み続けることでしか
得られない何かがありました。
何になってもならなくても、
ただそれだけがそこにある。
「確かにここにある」という
実感が欲しかったのかもしれません。
歩いても歩いても前に
進んでいないような気がして、
自分がどこにいるのかも分からない。
前が見えない中、
それでも歩き続けた先に
一体何が見えるのか。
この作品の制作当時は、
最終的な完成図を決めないままに、
「糸を編む」ということだけを決めて
作り始めました。
3階から1階まで糸を編んだ後、
どう展開してゆくのか、
自分でも分からないまま、
糸を編みながら考えました。
最終的に、編んだ糸は解けて人になりました。
私の中で絡まっていた糸が、
少しずつ解けてゆくような気がしました。